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PAX Australia 2015がウォーレン・スペクター氏の「ゲームデザイン講義」で開幕

PAXオーストラリアの開幕にあたって「ゲームデザイン講義」が開催。『Deus Ex』『エピック・ミッキー』シリーズの生みの親として知られるウォーレン・スペクター氏が登壇しました。

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PAX Australia 2015がウォーレン・スペクター氏の「ゲームデザイン講義」で開幕
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2015年10月30日から11月1日まで、オーストラリア第二の都市、メルボルンで開催されたPAXオーストラリア。これまでアメリカ国内で開催されてきたPAXの歴史の中で、はじめて国外で開催されたPAXであり、今年で3回目をむかえます。ゲーム関係のイベントが集結する「メルボルン国際ゲームウィーク」の一環でもあり、期間中に6万人の集客を数えるオーストラリアでも最大級のゲームイベントです。


この基調講演にあたる催しとして、『Deus Ex』『エピック・ミッキー』シリーズの生みの親として知られるウォーレン・スペクター氏が登壇しました。スペクター氏は「ゲームは重要な価値があり、非常にユニークな存在である」として、ゲームデザインのノウハウ解説を交えながら持論を展開。約1500名が収容できるシアターホールは、(朝一番の講演にもかかわらず)一般のゲーマーとゲーム開発者でほぼ満席となり、関心の高さを感じさせました。


1955年生まれ、すなわち今年で60歳のスペクター氏。それまでゲームといえばチェスやモノポリーのことでしたが、1978年(=23歳)で初めてTRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』を遊んで、衝撃を受けたと言います。ポイントは「参加者全員でストーリー体験の協業作業をしていること」。こんなメディアは他になかったというのです。これがきっかけでスペクター氏は1989年、Origin Systemsに入社し、『ウルティマ4』のゲームデザイナーを務めることになります。

■キーワードはオーサーシップの共有


ゲームをユニークなものにしている点は何か。スペクター氏はまず「ゲームでは現実にできないことができる」「プレイヤーに強い衝撃や印象感を与えられる」「ゲームは能動的なメディアで、参加者同士が助け合える」「ゲームはプレイヤーにフィードバックを返す」という4点をあげます。こうした特徴は古典的なメディアそしてエンターテインメントには存在せず、いまや世界中で数億人のプレイヤーがゲームを楽しみ、ハリウッドをしのぐ市場規模に成長しました。

そのうえで最大のポイントとして上げられたのが「オーサーシップ(著作者)の共有」という概念です。少々耳慣れない概念ですが、ここではゲームにかかわるすべての人(=ゲームデザイナーとプレイヤー)がそれぞれ、意味のある行動を行い、お互いが絡み合いながら、各々のセッションやゲーム自体、そしてゲーム全体をユニークなものにしている、と捉えればいいでしょう。すなわち『D&D』のユニークさは、ゲーム全体に拡大解釈できるというわけです。

プレイヤーはゲーム内で重要な選択を行い、それによって結果が得られます。その結果はゲームの応答性(プレイヤーに対してリアルタイムにフィードバックを返してくる)によって担保されます。その結果、すべてのセッションは唯一無二の存在となります。つまりゲームデザイナーはプレイヤーの経験(=ユーザー体験)を最初に考慮して、ゲームをデザインすべきである。プレイヤーの経験とは「プレイヤーの表現」に置き換えられる......スペクター氏はこのように続けます。

■ゲームプレイはコラボレーション


ゲームを遊ぶ行為は、プレイヤーとゲームデザイナーとの対話である、とも指摘されました。「ゲームデザイナーは究極のゴールを設定し、ルールを作り、ツールを提供し、ビジュアルとサウンドを提供し、プレイヤーの選択肢を制限する。すなわちゲームデザイナーの仕事とは、プレイヤーにゲームプレイの方法を発見したり、探索するためのツールを提供することである」というスペクター氏の解説は、簡潔にして的を得ています。

「ゲームデザイナーはプレイヤーの行動に対して意味(文脈)を与えることであり、プレイヤーの行動を促進させるための環境を用意することである」「プレイヤーに対して特定の経験をゲームデザイナーが強制してはいけない」「プレイヤーは予定表を次々にこなしていき、ゲームデザイナーはその予定表がなぜ重要なのかについて説明する」「ゲームとはさまざまな階層でのコラボレーションである。コラボレーションとはオーサーシップの共有である」......このように講義は続きます。

その後、講演は『ウルティマ4』から『エピック・ミッキー』シリーズに至る、スペクター氏の過去の作品の紹介と教訓に移りました。不幸にして(ウォーレン・スペクターですら)プロジェクトがお蔵入りになった幻のゲーム『Ninja Gold』『Sleeping Giants』の映像も惜しげなく披露。自身がクリエイティブ・アドバイザーをつとめ、先日キックスターターで86万ドルを調達した新プロジェクト『Underworld Ascendant』について触れる一幕もありました。

お蔵入りになった幻のゲーム『Ninja Gold』

同様にお蔵入りになった『Sleeping Giants』

新プロジェクト『Underworld Ascendant』


■万雷の拍手で講演は終了

最後にスペクター氏はデベロッパー、パブリッシャー、プレイヤーの役割りについて整理しました。デベロッパーは私たち(=ゲーム業界にかかわるすべての人々)をユニークな存在にしてくれる。パブリッシャーはデベロッパーに対してチャンスを与え、クリエイティブな行為をさせてくれる。そしてプレイヤーはゲームに対して、購入(=課金)を通して信任投票をしている......そのようにまとめました。


「21世紀中盤のゲームはどのようになるでしょう?自分の考えは話しました。皆さんの考えはどうですか?」と聴衆に投げかけ、講演を終えたスペクター氏。高度な概念をわかりやすく説明するスペクター氏の講義に対して、来場者は万雷の拍手をもって答えました。PAXオーストラリア、そしてメルボルンのゲーム熱を象徴するような講演だったと言えそうです。
《小野憲史》
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