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世界中の文壇を驚かせたミシェル・ウェルベックの著作について、あなたは懐疑的な思いを抱いていた。どこがという話ではなかった。翻訳文だが文章はそこそこ上手いし、展開もまあまあ面白いと思う。にもかかわらず彼の作品群が獲得している名声に、あなたは賛同することができなかった。
なんといってもこのゲームブックはクトゥルー神話を題材としているので、この奇妙なフランス人作家のデビュー作である評論を再読しておくのも良いかもしれないな、とあなたは思った。このゲームブックの冒頭にあらわれた、ラヴクラフトの「そこはかとない人種/階級差別的な発想」という示唆も、そもそもウェルベックが指摘していたものだった。
あなたは『H.P.ラヴクラフト 世界と人生に抗って』を数ページほど読み、ウェルベックが指摘していたラヴクラフトの差別的な思想そのものに、ウェルベック自身が感染していることに気づいた。よく考えてみると、ウェルベックのそれまでのすべての著作にも、女性蔑視や黒人差別のにおいが含まれていることに気づいた。
あなたはTwitterで「ミシェル・ウェルベック」と検索し、彼がいままでに行った発言を自動的につぶやきつづけるbotを発見し、そこでつぎのような論調の一行を認めた。
言葉は基本的に現実の諸要素を寸断し、分類するものであり、したがって本来的に攻撃的なものである。
5.あなたはウェルベックとドナルド・トランプの性質の近さについて思いつき、それについて十五分ほどで文章を書き、よせばいいのにはてなブログに投稿した。