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『百英雄伝』反体制の危険な本?民衆の喝采を浴びるアウトローの物語「水滸伝」【ゲームで世界を観る#74】

「三国志演義」に並ぶ四大奇書のひとつ。

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『百英雄伝』反体制の危険な本?民衆の喝采を浴びるアウトローの物語「水滸伝」【ゲームで世界を観る#74】
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2020年7月のKickstarterキャンペーンから4年、4月23日にリリースした『百英雄伝』は100人の仲間や拠点の開発、戦争や一騎打ちなど、KONAMIの人気シリーズ『幻想水滸伝』のテイストを引き継いで制作されました。

「100人越えのプレイアブルキャラクターが登場するゲーム」というものはなかなか大変ですが、その元になったのが中国の古典「水滸伝」です。『幻想水滸伝』以外には、光栄(現コーエーテクモゲームス)より歴史シミュレーション『水滸伝・天命の誓い』と続編の2作があります。

中国北宋、悪政によって民衆が苦しめられる八代皇帝・徽宗の治世(1120年頃)。様々な事情で盗賊の根城「梁山伯」に流れ着いた無法者達が、リーダー宋江(呼保義)の下に集い、替天行道を掲げて反乱軍を組織する物語です。全100回分の語り本(71回、120回のバージョンもあり)から成り、タイトルの「水滸伝」とは、河川に囲まれた梁山伯が「みずのほとり」であること由来します。

京劇の人気演目「林沖夜奔」

反乱軍に集うメンバーは封印から解き放たれた「魔星」の生まれ変わりであり、かつては天界から追放の罰を受けた者でした。そのため登場するのはどれも癖のある人物ばかり、大半は盗みや殺人の罪を犯して追われているようなアウトロー、「好漢」です。

そんな人々が一致団結し、やがては朝廷の軍と対峙、官軍に入って壊滅していくまでが描かれます。荒くれの武人が活躍するアクションエンターテインメントとして、京劇などで人気の題材になっています。

水滸伝の物語は史実上でモデルがおり、歴史書「宋史」において「宋江は36人の仲間とともに斉、魏を荒らし回った」と記述されています。中国では9の倍数が最大級の数として扱われ、特に「36」に三十六計逃げるに如かずなど「ありとあらゆる」の意味合いがあります。北斎の「富嶽三十六景」のように、ひとまとまりの数としても用いるので、36人ぴったりと言うよりは、それだけ多くの人材を抱えているという意味かもしれません。この宋江の話が後の世に膨らんでいき、宿星の要素や人数の大幅な増加を経て、ファンタジー歴史エンタメ作品へと発展しました。

108人のうち主要なメンバー36人を天罡星三十六人、それ以外を地煞星七十二人とし、腐敗した朝廷を正したいと願う宋江の下に集うまでが70回をかけて描かれ、奸臣との戦いを経て宋江が願っていた朝廷仕えが実現しますが、そこからは官軍として派遣された戦いや、狡猾な陰謀によって次々に殺されていきます。宋江でさえも毒殺に遭い、あまりにも無残な結末から108人が揃ったところで終わらせる71回版も作られました。

人気があるとは言え、やはりアウトローの物語なのであまり道徳的とは見なされず、「男不読金瓶、女不読西廂、老不読三国、少不読水滸」(男は金瓶梅を読むな、女は西廂記を読むな、老人は三国志演義を読むな、少年は水滸伝を読むな)と言われるように、変な影響を与える書のように扱われることもしばしばです。反乱が起きる時代には、反体制の思想が描かれた危険な書として禁止にもされています。ちなみに「金瓶梅」は「水滸伝」の登場人物西門慶を主人公にしたもので、複数の妾を侍らせる好色男の物語です。

「水滸伝」は江戸時代の日本でも人気を博し、曲亭(滝沢)馬琴が一部翻訳を手がけたほか、人物を女性化、日本の鎌倉時代に置き換えた「傾城水滸伝」というアレンジ作品も作っています。そして、人数は少ないながらも八つの数珠に結びつけられた八犬士を集める「南総里見八犬伝」は「水滸伝」の設定が下敷きです。

今から本格的に水滸伝に触れるなら、定番はやはり北方謙三の小説版ですが、Web連載の絵巻水滸伝や2011年の中国ドラマ版も人気です。短めのものであれば横山光輝やさいとうたかをなど様々な漫画家が挑戦していますし、現代歌舞伎の演目にもなっています。ゲームも含めて親しみやすいところから入るのがいいでしょう。今後は北方版の映像化も控えているようなので、「三国志」と並ぶ中国古典として知っておくのもいいのではではないでしょうか。


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